音声記事紹介:「知らないと怖い農協改革のカラクリとは?」

音声記事紹介:「知らないと怖い農協改革のカラクリとは?」
2015年03月23日(月) 晴れ

 春分の日を過ぎて、夜よりも昼の方が長い期間に入った。今週末には三島でもソメイヨシノが満開になるのかもしれない。
 さて、本日は、経済アナリスト・三橋貴明さんが今朝のメルマガで公開したばかりの音声記事を紹介する。以下URLである。
   https://www.youtube.com/watch?v=tdZJGFU19ac
 上の音声記事は、彼の有料コンテンツ「月刊三橋」の今月号として3/11に会員に発行されたばかりの記事の一部であり、これほど早く、一部を無料公開したのは、彼が余程の危機感を持ったので、広く公開して危機意識を共有させたかったのではなかろうかと思う。約15分の音声メッセージ(女性との対話形式)であるが、安部政権が進めようとしている農業改革の内容と背景、アメリカの狙い、このままでは日本の食料安全保障が危機に陥るかもしれない事など、とても分かり易く解説しているので、時間の有る方は是非、視聴してみると良い。
 とにかく、安部政権は、日本の食料安全保障のことなど全く考えていない(と言うかピンと来ていない?)様であり、日本の農家を一般企業と同列に考えている様にしか思えず、「世界と戦って勝って利益を上げろ、負けたら撤退しても仕方がないだろう」くらいにしか思っていないのではないか。以下は、同じく三橋貴明さんの3/22のブログ記事の抜粋であるが、日本は比較されている各国の中で農業への補助金が一番少ない国家であるとのこと。数字データなので嘘も何もなく、これが実態である。国土の殆どが山林で僅かな耕地しかない日本が広大な耕地をもつ米国やオーストラリアとまともに対抗できる訳がないことは当たり前であり、それでも食料安全保障(食料自給率の確保)のことを考えたら、関税を引き上げて輸入をある程度の量まで抑制するなり、農家に補助金を出して農業を維持して貰うなりするしかない筈である。先週、NHKの「クローズアップ現代」で、中国に買い負けして牛肉の輸入が難しくなって来ている実態がレポートされていたが、食料自給率が低いと言う事は、常にこんな危険が潜在していると言うことである。何か問題が発生して食料輸入に支障が出たら、日本国民はすぐに飢えると言うことである。

〜〜〜〜三橋貴明さんのブログ(3/22)〜〜〜〜〜 全文は右のURL参照。⇒http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12004607020.html
日本 15.6%
アメリカ 26.4%
フランス 90.2%
イギリス 95.2%
スイス 94.5%

 上記は、何でしょう。
 実は、農業所得に占める直接支払(財政負担)の割合です。意外かも知れませんが、
実は日本は先進国の中で突出して「農業予算が少ない国」なのでございます。

 ちなみに、アメリカは全体の「財政負担対農業所得」は26.4%ですが、小麦農家は62.4%、
トウモロコシ44.1%、大豆47.9%、コメ58.2%となっています。穀物という戦略物資については、
農家の所得の半分前後を「政府の負担」としているのです。
 なぜ、各国がここまで農家に予算を費やしているのか。理由はもちろん、そうしなければ「国家の食料安全保障」が
維持できないことが分かっているためで、食料自給率を引き上げるために、農家の「保護」に巨額の予算を費やして
いるのでございます。
 
『農業所得、8兆円に倍増=食料自給率、45%目標−25年度、農水省計画
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201503/2015031700467&g=eco
 農林水産省は17日、今後10年間の農業政策の方向性を示す「食料・農業・農村基本計画」の原案をまとめ、
審議会に提示した。食料自給率の目標を50%から45%に引き下げる一方、経営の多角化で農業・農村所得は
8兆円に倍増が可能と試算。農業の成長産業化に向けた施策を加速させる方針を強調した。わが国の潜在的
農林水産物の生産能力を示す「食料自給力指標」も創設した。月内の閣議決定を目指す。
 2025年度の農業・農村所得の内訳は、産品の生産・販売所得が3.5兆円(13年度が2.9兆円)、
輸出や異業種連携といった分野の所得を4.5兆円(同1.2兆円)と推計。食料自給率と異なり、基本計画の
目標とは位置付けていないが、政府・与党が掲げる「農業・農村の所得倍増」目標に沿った格好だ。(後略)』

 農林水産省は、十年後の農業所得を「二倍にする」という方針を打ち出しました。ということは、日本も
欧米諸国並みに農家への直接支払(財政負担)を引き上げるという話なのでしょうか。

 恐らくというか、間違いなく違います。何しろ、農水省は農業所得を二倍にする方法として
「輸出拡大」成長産業化」「経営多角化」と、市場主義的なキーワードを叫んでいます。しかも、
これが象徴的なのですが、カロリーベース自給率の目標を引き下げ(45%に)、生産額ベースの自給率目標を
引き上げるという方針を打ち出しました。

 カロリーベース自給率とは、完全に国内(国民の胃袋)の話です。それに対し、生産額ベース自給率は、
外国への農産物の販売も含みます。
 国民の胃袋を満たすための目標を引き下げ、外国への農産物輸出を含む「生産額」の目標を引き上げた
わけです。すなわち、農家は市場競争し、グローバル化し、外国に農産物を売り込み、所得を「努力して
倍増しなさい」という話なのでございます。

 日本列島という、大規模農業に向かない国土の農家に対し、諸外国と比較すると極端に低い農業予算しか
支出せず、さらに家族経営を維持するために必須の農協を「解体」し、予算積み増しではなく、
「世界で戦え。そして、それぞれが努力して所得を倍にしろ」
 と、無責任に煽り立て、さらにTPPで関税を引き下げ、もしくは撤廃し、欧米のような
「分厚い政府の直接支払」がない中、市場競争の荒波の中に日本の農家を叩きこむ。この残酷な政策が、
安倍政権の農政というわけでございます。

 上記農林水産省の目標設定、農協改革、そしてTPPの三つは、完全にリンクして動いていることが分かると思います。

 TPPの場合、目的は「日本の農産物の市場を、外国企業に開放する」には限りません(それもありますが)。
 安倍総理大臣は、参議院予算委員会で、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉について「最終局面にあり、
早期妥結へ全力を挙げている」と述べました。いつの間にか、目標が「日本の国益を守る」ではなく、「早期妥結」
になってしまっています。
〜〜〜〜三橋貴明さんのブログ(3/22)〜〜〜〜〜