カナディアン・ロッキー旅行2013 (4) 〜コロンビア大氷原観光〜
2013年10月2日(水)〜10月8日(火)
更新:2023年12月23日(土)
■10月3日(木) 晴れ
【5】レイク・ルイーズ
バンフの2日目は快晴。
5時に起床し、前夜にホテル内のデリカテッセンで調達した朝食を取る。テレビのお天気ニュースでは、晴れマークであった。
本日は、いよいよ この旅で一番訪れたかった場所、レイク・ルイーズを観光する日である。
ちなみに、山や湖の呼び方で、「山」や「湖」と言う言葉が、名前の前に付く場合と後につく場合があるが、この使い分けには意味があるそうである(カナダだけの話かもしれないが)。
即ち、人の名前等をつけた山や湖の場合は、名前の前に「山」や「湖」を付け、そうでない場合は、名前の後に「山」や「湖」を付けるそうである。
例えば、「レイク・ルイーズ」と「エメラルド・レイク」と言う二つの湖について、前者(ルイーズ)は、人の名前を付けた湖と言うことである。ルイーズと言うのは、英国のヴィクトリア女王の第4王女・ルイーズ・キャロライン・アルバータさんの名前である。
彼女は、カナダ総督ジョン・キャンベル氏の奥さんとなった人であり、「ルイーズ」が湖の名前になり、「アルバータ」がカナダの州の名前になっている。
それから、「山」の場合、名前の前に付ける時は「マウント」、名前の後に付ける時は「マウンティン」となるらしい。
このルールが、もし世界的に共通なルールなのだとしたら、富士山は「マウント富士」ではなく「富士マウンティン」と呼ばなければいけないのかもしれない。
まあ、真偽は定かではないが。
この日は、7:45にホテルロビーに集合だったので、15分前にロビーに降りてスタンバイ。
5分ほどしたら、「JTB」のカードを持った若い男性がロビーに現れたので、挨拶をした。
彼の名前は、嘉山さんと言い、神奈川県出身の方であった。
どうやら、バンフスプリングスホテルからの参加は、我々夫婦だけだったらしく、早速 車に乗り込んで出発。
車は、米国製の10人乗りのワゴンであり、横幅が広くて、日本の狭い道ではキツいかも知れない図体であった。
本日のツアー名は、「カナディアンロッキーとコロンビア大氷原観光」であるが、一緒に周る参加者は、我々夫婦を含めて2組4名とのこと。
もう一組は、バンフ市街のホテルに宿泊しているそうなので、これから そちらに迎えに行く様である。
バンフ市街地への下り坂を下り始めたところで、嘉山さんが、「エルクが来てる」と言って車のスピードを緩めた。
右手を見たところ、ホテルのすぐ下の広場にエルク(鹿)が2頭いた。角(つの)が見えたので、雄(おす)もいた様である。
嘉山さん曰く、「今は発情期のため危険だから、雄には絶対に近づかない様に」との事だった。車にでも、平気で体当たりしてくるそうである。
辺りは、まだ薄暗かったが、前夜に初雪が降ったらしく、バンフ市街には あちこちに雪が残っていた。
市街のホテルで、もう1組のご夫婦を拾ったあと、車は国道1号線に乗り、いよいよカナディアンロッキーの奥へと進んで行く。
ちなみに、もう1組のご夫婦は、新婚旅行中のカップルであり、イエローナイフでオーロラを見て来たあと、昨日、バンフに入ったそうである。
この日も、嘉山さんがマイク付きヘッドホンを付けて、運転しながら観光ガイドをしてくれた。
国道1号を進むうちに、アーチ型の陸橋(下の写真)が何ヶ所か架かっていたのだが、これは、動物が国道の左右を行き来する事が出来る様にするために、カナダ政府が造った陸橋だそうである。
最初は、同じ目的で、国道の下にトンネルを造ったらしいのだが、これは大失敗に終わり、動物たちは警戒して全く利用しなかったらしい。
そこで、新たに造ったのが、この陸橋なんだとか。
陸橋を造る目的であるが、何でも、国道で動物たちの生活圏を分断してしまうと、国道の両側での交流が無くなってしまい、左右で別々の生態系が出来てしまうらしい。
両側での交配が無くなると言うことは、その分、各々の地域で血が濃くなってしまい、弱い体質になるらしい。
嘉山さん曰く、「『血統書付き』と言うのは、血が濃いと言うことだから弱い。血統書付きよりも、雑種の方が逞しい。」とのことであった。なるほど。
ここで、嘉山さんよりクイズが出たのだが、「この陸橋の工費はどれくらいか?」という問題であった。
私は、5千万円程度だろうと思ったのだが、クイズに出すくらいだから、実は2千万円を切る工費なのかなと思ったりもした。
ところが、答えは1億8千万円とのこと。
その理由は、「この陸橋は、絶対にメンテナンス(補強とか再工事)をしてはならないと言う条件が付いているため」だそうである。
人間の手が入ってしまうと、動物たちが人間の存在を感じてしまい、警戒して、二度と使わなくなるからと言うことだそうである。
国道1号線を進むうちに、左右にはロッキーの山々や氷河、湖が現れ、その各々に嘉山さんのガイドが入るのだが、正直、これだけ多くの山が、現れては消えて行くのでは、幾らガイドを聴いていても、頭に入るものではない(笑)。
その中でも、一つだけ記憶に残ったのがキャッスルマウンティンである。
ちょうど、城壁の様に見える山のために付いた名前である。
しかし、この山は、車が進むに連れて見える形が変わるらしく、その理由は、山がL字形をしているためだそうである。
暫く走るうちに、いよいよレイク・ルイーズに近づいて来た。
国道1号線を逸れて支線に入ると、4−WAY STOPと呼ばれる交差点が、何ヶ所か出現する。
これは、信号の無い交差点でのルールに関するの種類の一つであり、この種類の交差点では、
●全ての方向の車は交差点の手前で一旦停止する義務があり、
●最初に一旦停止(完全な停止)をした車から順に交差点への先入権が得られる
と言うルールだそうである。
しばらく進むと大きな駐車場があり、レイク・ルイーズに到着。朝早くから結構な人数の観光客が来ていた。中でも中国人の団体が目立っていた。
レイク・ルイーズは神秘的な美しい湖であり、ちょっと歩いて、見る角度が変わっただけでも美しさが変わるし、ちょっと時間が経っただけでも、湖面の色が変わるしで、何枚写真を撮っても、また撮りたいと思わせる湖である。
【6】アサバスカ氷河
レイク・ルイーズをあとに、車は国道1号線(トランス・カナダ・ハイウェイ)に戻り、暫く進むと、右に分岐するルートに入る。国道93号線(アイスフィールド・パークウェイ)である。
分岐すると、すぐに右側にはカナディアン・ロッキーでも最古の地層帯であるミエット地層帯が見えて来る。
6億〜7億年も前の地層だそうである。
さらに暫く走ると、左手にクロウフット氷河が見えて来る。
ここで記念撮影。
クロウと言うのは烏(からす)のことであり、カラスの足の様に3本の氷河が延びていたところから付いた名前だそうである。
ただし、現在は、そのうちの一番下の氷河が崩落してしまい、2本だけが残っている。
さらに進んだところにあるウィルソン山の近くのドライブインで、トイレ休憩を取る。
ここからの眺望は良く、ウィルソン山、マーチンソン山、バンフ国立公園で2番目に高いフォーブス山を見ることが出来る。
休憩のあとは、いよいよ本日のツアー名になっているコロンビア大氷原の氷河を目指す。
休憩の後に、車に乗って走り出してから気になり始めたのだが、車のシートベルトが、妙に身体に食い込んできた。
これは、翌日になって別のJTB担当者に聞いて分かった事なのだが、この米国車のシートベルトの仕様は、
●ベルトを最後まで引き出してしまうと、ギギッと言う音がして、ロックが掛かってしまう。、
●以降は、弛みが勝手に引き込まれて吸収されてしまう。
●吸収された分のベルトは、幾ら引っ張っても、もう出て来ない。
との事。
こうなると、もうベルトは一方通行で身体に食い込んで行くばかりである。
ロックを解除するには、
●一旦ベルトを外して、全部引き込ませてしまう(ベルトを締める前の初期状態に戻す)必要がある。
まあ、このシートベルトの仕様は使い辛いと言ったらない。本当に変な仕様である。
ちなみに、日本車のシートベルトの仕様は、
●急に引っ張られた時にだけ、ロックが掛かって延びなくなるけど、
●ゆっくり引っ張れば、ベルトは延びる
という仕様なので、
車が衝突して身体が前につんのめる瞬間だけロックが掛かって、身体をシートに固定する仕様である。
この日本仕様が、シートベルト本来の目的に対して理に叶った仕様であるが、米国車の仕様では、正直使い物にならない気がする。
さて、車は暫く行くと大きく右に曲がる上りカーブに差し掛かる。
登りきったところで、嘉山さんが写真撮影のために車を止めてくれたのだが、ここからの景色は、マリリンモンロー出演の映画「帰らざる河」に出て来る景色だそうであり、走ってきた国道93号線や、シーラス山と氷河で削られて出来た谷が見える絶景ポイントである。
ちなみに、水で削られて出来た渓谷はV字型の渓谷で、氷河で削られて出来た渓谷はU字型の渓谷になるそうである。
違いは、削られる時間(スピード)の差である。氷河は、何万年も掛けてゆっくりと削られると言うことである。
そして、いよいよコロンビア大氷原から流れ出るアサバスカ氷河に到着。
氷河面に行く前に、レストランでランチタイム。
食事は、中華バイキングであった。
ここに来るまでの道すがら、何ヶ所も氷河をガイドされたのだが、見る限りは、雪が積もっているだけにしか見えず、正直ピンと来なかった。
しかしながら、アサバスカ氷河の前で、嘉山さんより「サングラスを掛けると良く分かる」と言われ、掛けて氷河を見たところ、良く分かった。
氷河と言われるとおり、流れているのは氷なのである、つまり、サングラスを掛けると、「雪」ではなく青い色をした「氷」が見えるのである。
確かに氷の河であることが実感出来た。
ここで、コロンビア大氷原とアサバスカ氷河の関係を説明しておくと、コロンビア大氷原を「手のひら」に例えるならば、「指と指の間から大氷原の氷が溢れて流れ落ちる」のが氷河である。
この説明は、嘉山さんの説明の受け売りであるが、実は、嘉山さんだけではなく、カナディアンロッキー観光の日本人ガイドさん共通の表現であるらしいことが分かった。
と言うのは、ランチの後に、バスと雪上車を乗り継いで氷河面まで行く時に、バスには、幾つかのツアー団体が同乗するのだが、『一番人数の多いツアーのガイドさんが、代表してバス内のガイドをすると言う同業者間の約束事』があるらしく、その時のガイドさんが、嘉山さんと同じ説明の仕方をしていたのである。
この他にも、車窓から見る方向を説明する時に、『時計に例えて10時の方向』とか言う表現をするのも共通していた。
多分、日本人向けガイド養成のための研修機関でもあって、各社のガイドさんは、その研修を受講しているのだろう。
氷河面に行くのには、まずバスに乗り、雪上車の乗り場まで雪道を上る。そして、雪上車に乗り換えて、氷河の表面まで、傾斜角度10数度の下り道を降りるのである。
雪上車は、昔はキャタピラーで雪上を走っていたらしいのだが、キャタピラーが氷河を傷つけると言うことで、今では、タイヤに変わったそうである。
タイヤとは言っても、直径が1.5メートルはあろうかと言う大きさである。
氷河面には、段差を付けて「境界」が作られており、そこから上には立ち入らない様にとのことであった。
その理由は、積雪の下にクレバス(氷河の亀裂)が隠れていて、落ちたら助かる可能性が低いためである。
ちょうど「境界」のところに、氷河の融けた水が流れていたが、「この水を飲むと若返る」という言い伝えがあるそうであり、人に依っては、ペットボトルに詰めて持ち帰る人もいるんだとか。
この氷河面は、日に依っては視界0で何も見えなかったり、吹雪で激寒だったりするそうであるが、この日は快晴であり、また寒さも全然感じなかった。
気温はマイナス10℃に近いと思われるのだが、空気が乾燥しているのと、風が無いのとで、体感温度はそれほど低くないのだそうである。
確かに、ここにしても、バンフの街にしても、気温はマイナスなのに寒さは全然感じないのだが、同じ気温でも湿度が高いと体感温度は下がり、湿度が低いと体感温度は上がるそうである。
その代わり、乾燥していると身体中が痒くなるらしい。
私は汗かきのため、夏場はムレて身体が痒くなるのだが、冬でも、ムレてる訳でもないのに、時々、身体が痒くなることがあり、不思議に思っていた。
今回、乾燥したら身体が痒くなると教えられ、そうだったのかと納得した次第である。
【7】ボウレイク、バーミリオン湖、バンフ
アサバスカ氷河を出発した車は、もと来た道を引き返し、バンフへの帰途に着く。
帰り道では、嘉山さんが我々観光客の疲れに配慮して、ガイドはせずに、黙々と運転。
我々の方も、瞼(まぶた)が重くなり、眠りに落ちる。
そのうちに、ボウレイクに到着して、しばし休憩を取る。
ボウレイクは、ボウ川の源流であるが、広くて静かな湖であり、これまた綺麗な景色の湖であった。
遠くには、クロウフット山やボウ氷河が望める。
ボウ湖をあとに、車はバンフへと進むが、ちょうど右手に走るカナダ大陸横断鉄道の貨物列車と遭遇。
ここの貨物列車は、平均して100両くらいの車両を連ねているそうであるが、本当に、前方を見ても後方を見ても、末端の車両が見えないほどの長さの列車である。
嘉山さん曰く、「踏切で、この列車に遭遇してしまうと、15分は踏切が開かない」と言う事だそうである。
そのために、現地でお客様に渡すJTBの滞在案内資料には、『ホテルへのお迎えが15分程度遅れる場合がある』と明記されているんだとか。
我々が、車窓から列車の写真を撮り出したのを見て、嘉山さんが気を効かせて、「絶好の撮影ポイントに案内する」と言って、車のスピードを上げた。
そのポイントは、バーミリオン湖が見えるポイントであり、湖の向こう側を走る貨物列車をカメラに収めることが出来た。
ちなみに、このポイントからは、背後にランドル山も見えて、バンフの街が近いことが分かる。
やがて、車はバンフに到着。
ツアーでは、ホテルまで送迎してくれる事になっていたが、ホテルに帰っても、夕食のために、どうせまたバンフまで出て来ないといけないので、ホテルへの送りは辞退して、新婚夫婦が市街のホテルで下車する時に、我々夫婦も、一緒に降ろして貰うことにした。
この日の夕食は、特に店の予約をしていなかったので、適当に店を選ぶことにしていたが、まずは、翌日の朝食を調達するために、スーパーマーケットに入ることにした。
「セイフウェイ」と言うスーパーに入ると、品物は豊富に並んでおり、お総菜は、量り売りで販売されていた。
結局は、夕食も買い込んで、部屋でワインを飲みながら戴くと言う、うちの夫婦の定番のパターンを取ることにした。
ワインは、近くにあったリカーショップで、赤ワインのボトルをGET。
なお、カナダでは、お酒に関するルールが厳しく、お酒は、政府直営のリカーショップでしか販売が許されていない。
また、野外での飲酒は禁止、お酒を剥(む)き出しで持ち歩くのも禁止されている。
従って、カナダでは、野外でバーベキューやキャンプをしても、お酒は飲めないのである。厳しい!
ショッピングのあとは、バスでホテルまで帰り、部屋で早速の酒盛りと相成った。
(つづく)