【ノウハウ】原爆と水爆

【ノウハウ】原爆と水爆
 下の記事にて、軍事アナリストである小川和久さんが、分かりやすく説明している。
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原子爆弾
原爆は、ウラン235プルトニウム239などの核分裂反応によるエネルギーを利用した爆弾。
あらゆる物質をつくる原子は、原子核とその周囲にある電子(電気的にはマイナス)からできている。原子核は、さらに陽子(電気的にはプラス)と中性子電荷がない=電気的にプラスでもマイナスでもない)からなっており、異なる物質では陽子や中性子の数が違う。重い原子のうち不安定なもの(核分裂性物質と呼ばれるウラン235プルトニウム239)が中性子を吸収すると、一定の割合で核分裂を起こすとともに中性子を放出する。この中性子が別の核分裂性物質の原子核に吸収されると連鎖反応が起こり、同時に大量の熱を出す。この『核分裂反応』が原爆の基本原理。原子力発電の原理も同じで、原子炉の中では原爆と同じ反応がゆっくり少しずつ起こっている。
原爆は、核分裂が連鎖的に進むと同時に爆発が起こり、核分裂性物質を飛散させてしまうため、ウラン235プルトニウム239の量をいくら増やしても、爆弾のエネルギーは500キロトンほどが限界。(広島原爆の33倍、長崎原爆の23倍)。

水素爆弾
水爆は、水素の同位体である重水素三重水素トリチウム)の核融合反応によるエネルギーを利用した爆弾。
軽い原子である水素の原子核(陽子)などは、きわめて高温高圧の状況下で、別の原子核と融合してより重い核になり、同時に大量の熱を出す。この『核融合反応』が水爆の基本原理。太陽が燃えている原理も同じで、恒星の内部では水素同士が融合してヘリウムがつくられている。
核融合反応は物質を追加すればするほどエネルギーを大きくできる。重水素三重水素(これらは常温では気体なので、実際にはリチウムと化合させて固化した重水素化リチウムを使う)の核融合には、超高温・超高圧が必要なので、起爆装置として原爆を使う。水爆の威力は原爆とはケタ違い。人類史上最大の水爆は、ソ連が製造して1961年10月30日に核実験した『ツァーリ・ボンバ』(『爆弾の皇帝』という意味)。これは100メガトン級のものの出力を50メガトンに抑えて爆発させたが、威力は広島に落とされた原爆『リトルボーイ』の実に3300倍。爆発によるキノコ雲は高さ60キロ、幅30〜40キロもあったとされ、一次放射線の致死範囲(500レム)は半径6.6キロ、爆風による殺傷範囲は23キロ、致命的な火傷を負う熱線が届いた範囲は実に58キロに及んだとも言われている。爆発の衝撃波は地球を3周した。
水爆は技術的にハードルが高いだけでなく、小型化しても威力が大きすぎ、事実上、使えない核兵器の代名詞のようになっている。国際的に核保有国として扱われるということは、つまり核抑止力を備えたということ。そうなると、巨大な軍隊を持って抑止力を維持する必要はなくなり、軍縮に踏み切ることもできる。