【お勉強(歴史)】戦後の歴史、日本国憲法、ほか(2)

【お勉強(歴史)】戦後の歴史、日本国憲法、ほか(2)
2016年04月07日(木) 雨

 先日の続き。書籍の名前は以下。
  『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』 (著者:矢部宏治)
 以下、この本で知った事を、自分のためのまとめとして列記しておく。(続き)

■日本の法治社会に存在するオモテとウラ。ウラの社会こそが法的権利に基づくリアルな社会
・オモテの最上位法である日本国憲法の上位に、安保条約が存在すると言うのが、その代表的な例。さらに、安保法体系にも明記されていない隠された法体系がある。それが密約法体系
密約法体系とは: 米国との交渉の中で、飲むしかないが日本国民には絶対に公表できない重要な合意事項があり、日本はずっとサインして来た。密約であっても、国際法上は条約と同じ効力。故に日本の法律よりも上位であり、統治行為論最高裁憲法判断しない事が確定)と合わせると、これらの密約は憲法より上位となる。

■米国で公開された二つの密約に関する公文書。「秘密報告書」と「基地権密約」
・この二つの公文書を読めば、日本が、戦後70年経っても まともな主権を持つ独立国家でない事が分かる。
・戦後のGHQ占領時期は、米軍は日本の法律に関係なくオールマイティー。占領終了時に締結したサンフランシスコ講和条約日米安保条約でどうなったか? ⇒ 結果は、依然として軍事占領状態が続いたと言う事
秘密報告書とは: 日本のアメリカ大使館から本国の国務省に送られた文書。文中の「行政協定」とは、旧安保条約にて日米間で取り決めた在日米軍の法的特権に関する協定。現安保条約での日米地位協定に相当するもの。主な内容は以下。要は、日本に駐留する米軍には、占領時とほぼ同じ権限が1952年の日本独立後も保証されていると言う事
 - 行政協定は、米軍が占領時に保持していた軍事活動のための権限と権利を米国のために保護している
 - 安保条約のもとでは、米国は日本政府との如何なる相談も無しに米軍を使う事ができる。
 - 行政協定では、新しい基地の条件を決める権利も、現存する基地を保持し続ける権利も、米軍の判断に委ねられている
 - 米軍施設についての基本合意に加え、地域の主権と利益を侵害する数多くの補足的な取り決めが存在する。
 - 米国諜報機関要員は、何の妨げも受けずに日本中で活動している。
 - 米軍の部隊や装備は、地元との如何なる取り決めも無しに、また、地元当局への事前連絡も無しに、日本への出入りを自由に行う権限が与えられている。
 - 米軍の決定によって、日本国内での演習射撃訓練が行われていて、軍用機が飛び、その他の非常に重要な軍事活動日常的に行われている
基地権密約とは: 正式な名称は、「基地の権利に関する密約」。1960年の新安保条約締結の直前に、岸信介政権の藤山外務大臣と駐日アメリカ大使の間で交わされた密約。主な内容は以下。要は、新安保条約の締結に伴い交わした日米地位協定では、旧安保条約の締結時に交わした行政協定と全く同じ米軍の権利が保証されると言う事
 - 日本における米国軍隊の使用のために日本政府によって許与された施設と区域内での米国の権利は、1952年2月28に東京で調印された協定(行政協定のこと)のもと保証されたものが、1960年1月19日にワシントンで調印された協定(日米地位協定のこと)のもとで、変わる事無く続く
 結局、1960年に改定されたと日本政府が言っている新安保条約においても、即ち、今現在においても、日本に駐留する米軍には、占領時とほぼ同じ権限が保証されていると言うこと。それのいったい何処が独立国家なんですか? と言う事である。やれ騒音がうるさいの、オスプレイは危険だのと言っても無駄で、米軍は、日本政府には何の相談も無しに配備出来るわけである。日本政府が協定で認めてしまっているのだから。

■日本は独立国家に非ず
 国家の3要素は、国民領土主権。ところが・・・・・
・首都圏を覆う巨大な空域が米軍に支配されており、日本はそのエリアを飛べない上に、どんな飛行機が飛んでいるかも把握出来ない。・・・主権がない
・米軍はこの空域から着陸し、基地経由で(建て前)軍人は日本に出入り自由。勿論、基地の外にも出られる。(但し、基地の外は治外法権ではないが) しかも、日本政府には誰が入国しているのか、何人入国しているのか全く分からない。・・・国境がない
 結局、「自国内の外国軍に、殆ど無制限に近い行動の権限を与えること」と「民主的な法治国家であること」とは絶対に両立しない。日本は、現状の非独立国家に甘んじるか、米軍には撤退して戴いて自国は自国で守るしかないのである。

■両立しないという矛盾を隠すための三つの裏マニュアルと日米合同委員会
 戦後の日本は、この両立しないという矛盾を隠すために、国家の重要なセクションに分厚い裏マニュアルを作った。以下。
 - 最高裁の「部外秘資料」 正式名称は、「日米行政協定に伴う民事及び刑事特別法関係資料」 編集・発行:最高裁判所事務総局
 - 検察の「実務資料」 正式名称は、「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権実務資料」 作成・発行:法務省刑事局
 - 外務省の「日米地位協定の考え方」 作成:外務省条約局
在日米軍の軍人が重大な犯罪(例えば、レイプとか射殺とか)を犯した場合、日米合同委員会で非公開の協議が開催され、結果が法務省経由で検察に伝えられる。検察は極力軽めの求刑をし、裁判所に対しても軽めの判決を出す様に働きかける。裁判所は、働きかけ通りに、有り得ないほど軽い判決を出すという流れ。実際に米兵が日本人主婦を基地内で射殺した「ジラード事件」では、検察が殺人罪ではなく傷害致死罪で懲役5年を求刑し、前橋地裁は懲役3年&執行猶予4年と判決。検察は控訴せず執行猶予が確定。ジラードは判決の2週間後に米国への帰国が認められた。事実上の無罪判決である。
・こういった司法への違法介入が繰り返された結果、国家の中枢にいる外務官僚や法務官僚が、オモテの法体系を尊重しなくなった。

■「統治行為論」、「裁量行為論」、「第三者行為論」、すべて根っこは同じ。最高裁憲法判断から逃げた。
・砂川裁判で、「国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度な政治性を有する問題は、憲法判断はしない」という最高裁の判決が確定。 ⇒ 統治行為論
・2012年6月に原子力基本法が改正。第二条2項に「前項(原子力利用のこと)の安全の確保については、(略) わが国の安全保障に資することを目的として、行うものとする」と言う条項が追加。これにより、統治行為論と同じ理屈で、以降は、原発についての安全性問題は法的コントロールの枠外となった。愛媛県伊方原発訴訟にて、柏木賢吉裁判長の一審判決は、「原子炉の設置は国の高度の政策的判断と密接に関連することから、原子炉の設置許可は周辺の住民との関係でも国の裁量行為に属する」となった。 ⇒ 裁量行為論
・米軍の騒音訴訟は三者行為論と呼ばれる。
日本国憲法を機能停止に追い込む統治行為論は、行政官僚や司法官僚によって、基地以外の問題にも使い始められた。何しろ、「国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度な政治性を有する問題は、憲法判断はしない」のだから。上に書いた原子力基本法の改正が良い例。

■日本は勝手に脱原発する事は出来ない。何故なら、日米原子力協定でそう決められているから。
・日米原子力協定では、廃炉脱原発などは、日米両政府の間で協議しなければならない事になっている。つまり、米国が「NO」と言ったら駄目なのである。

 まだまだ続く。