歴史から学べ!(∵歴史は繰り返される) (1) 「発送電分離」     補足) ∵⇒「何故なら」と言う意味を表す数学記号


歴史から学べ!(∵歴史は繰り返される) (1) 「発送電分離」     補足) ∵⇒「何故なら」と言う意味を表す数学記号
2015年6月24日(水) 晴れ
 
「歴史は繰り返される」と良く言われる。だから、「歴史から学べ」とも言われる。これは正しい認識であると思うし、大事なことであると思う。「でも、"私だけは違う"、"今度は違う"」と思いたいのが人間である。そして同じ失敗を繰り返す。
 日本には3000年という立派な歴史があるのに、マッカーサー率いるGHQの占領政策により、西洋人の思想と相容れない大和の心、日本の歴史が、日本の教育から抹殺され、今や殆どの日本人(多分、70歳代後半以下。戦後教育を受けた日本人)は日本の歴史(教科書に出て来ない日本の歴史)を知らない。だから、歴史に学ぶという発想も欠如しているのではないかと思う。
 「中国4000年の歴史」などと良く聞くが、では、日本の歴史は何年だろうかと思いインターネットで調べていたところ、日本の歴史大和の心について、とても良く出来た映像を見つけた。(以下のURLをクリックすれば視聴出来る) いちいち腑に落ちる内容であり、戦後教育しか受けていない世代の人は、是非、一度見て戴きたい内容である。約30分の映像であるが、見る気があるなら最後まで見ることを強くお薦めする。
 映像はコチラ⇒https://www.youtube.com/watch?v=B3k9pjditxg
 
 さて、歴史は繰り返されると言うことに関して、一つ、インターネットの記事を紹介する。私が毎日読んでいる無料メールマガジン「三橋経済新聞」の本日の記事である。本日の執筆者は作家の佐藤健志さんと言う方である。内容は、先日の国会で成立した改正電気事業法、現在の電力会社を発電部門と送電部門で別会社化するということである。一見すると消費者にとっては自由競争原理が入り、電力料金の低下、サービス性の向上に繋がると思われるが、実際には、この施策が歴史を見れば失敗に終わるであろうことが分かると、佐藤さんは主張されている。この場合の「歴史」は、日本の歴史(1941年から10年間)と米国の歴史(つい最近の実態)である。以前にも、このブログで経済(経世済民。世の中を治めて民を救う)とビジネスは別物。ビジネス(利益追求、競争原理)と同じ感覚で経済(国の政策)を進めてはダメ。と書いたが、電力供給はまさに国民の生活を支える必須の社会インフラであり、従って、電力事業はビジネスではなく本来は国営で遂行すべきものである。ビジネスでやってしまうと、必ず利益重視が最優先され、利益が出なければ撤退という方向に進むのは必定である。その被害を被るのは地域住民である。しかも致命的な被害である。
 まあ、前置きはこのくらいにして、佐藤健志さんの記事を全文引用にて紹介する。出典は以下のURLである。
   http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/06/24/sato-49/
 
〜〜〜〜〜〜〜〜以下、全文引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
電力の発電と送電の別会社化、いわゆる「アンバンドリング」を2020年4月から行うとする改正電気事業法が成立しました。
まずは報道をどうぞ。
 
大手電力会社の送配電部門を発電部門から切り離す「発送電分離」を平成32年4月に実施するための改正電気事業法が17日、参院本会議で可決、成立した。電気料金の引き下げやサービスの多様化につなげる電力システム改革の総仕上げと位置づけられている。
電力小売りは28年4月に全面自由化することが決まっている。今回の法改正では大手電力が保有する送配電網を新規事業者も公平に利用できるようにする。事業者間の競争を促し、料金引き下げやサービスの向上に結びつくと期待される。
http://www.sankei.com/life/news/150617/lif1506170031-n1.html
 
よくぞ、これをやったもの。
 
わずか5年前、2010年の時点における、自民党のある有名政治家の発言をご紹介しましょう。
この方「日本のエネルギー政策は今後どうあるべきかについては、政府がどう変わろうとも、政権がどうなろうとも、真理は不変であるという信念」をお持ちでした。
ならば、その真理とは何か?
いわく。
 
エネルギー政策の推進には、三つの要素が考えられます。それは「セキュリティ」(注:安定性)と「環境」、そして「競争原理(経済性)」です。
この中で、プライオリティ(注:優先順位)をどう定めるかが大きな問題になってくる。トップにあげられるのは、やはりセキュリティですね。
エネルギーを安定的に供給できることがもっとも大事です。これは、これから先のことまで見通して取り組んでいくべきです。
 
立派な見識ですが、この政治家はどなたでしょう?
甘利明さんです。
現在の経済再生相。
 
加納時男さんの著書「三つの橋を架ける 国政参画十二年の挑戦」(日本電気協会新聞部)に収録されたインタビューから抜粋しました。
 
加納さんは東京電力の副社長を経て、1998年〜2010年にかけ、自民党の参議院議員として活躍された人物。
2002年に施行された「エネルギー政策基本法」の立役者でもあります。
 
議員時代、加納さんは甘利さんとエネルギー政策で組んでいました。
甘利さん、「息がぴったり合っていて、いわば『あうんの呼吸』でやってきた」とまで語るほど。
 
ならば加納さんは、発送電分離についてどう述べているか。
「三つの橋を架ける」の第三章には、興味深いことが書かれています。
 
国会議員になる前から、きわめて気になる動きがあった。それは、一言で言うと「市場原理至上主義」が蔓延しつつあったことだ。それが電力業界やガス業界へも侵食しようとしていた。1990年代の後半にさしかかっていた頃である。
(62ページ。表記を一部変更、以下同じ)
 
発送電分離の議論も、この動きの一環だったのですが、背後には日本の電力市場への参入をもくろむアメリカのエネルギー資本や金融資本があった、とのこと。
 
市場参入への障壁となっているのは、日本政府と日本のエネルギー産業が掲げる「エネルギーの供給責任」という使命感に基づいた鉄壁の守りであり、これを打ち破る論理として「市場原理至上主義」が持ち込まれたのである。
(同、63ページ)
 
事実、アメリカ通商代表部は、2000年と2001年に日本政府へ提出した規制改革要望書で、発送電分離を強く求めています。
これを受けて加納さん、向こうの政府高官と議論したのですが、そこにはこんなくだりが見られました。
 
規制改革の先陣を切り、アンバンドリングを率先して行ったカリフォルニアで電力危機が現実に起こっている。
 
私は現地に入ったが、電力需給のバランスが崩れ、輪番停電が生じていた。(中略)最大の驚きは関係者の誰に訊ねても「私の責任ではない」と一様に言うだけで、誰一人として「私の責任だ」と言わなかったことだ。
 
アンバンドリングによって確かに目先の価格(注:電気料金のこと)が下がったことは認めるが、火力発電設備の買い手は「供給責任」など重視せず、いかにして追加投資をせずに短期的利益を高め、機を見て上手に「売り抜けるか」を考えている。
その結果、いったん値下げ後、値上げになった例もある。さらに、全米を見ても、アンバンドリングを採用したという州は半数にも満たない。その上、失敗して逆戻りしたところもある。
(80〜83ページ)
 
冒頭でご紹介した記事には、発送電分離が「事業者間の競争を促し、料金引き下げやサービスの向上に結びつくと期待される」とありましたが、これにどの程度の説得力があるかは、すでに明らかと思います。
しかも、加納さんの話はまだ続く。
 
1941年8月に配電統制令が施行されてから1951年までのおよそ十年間、日本ではアンバンドリングを実施した。戦争目的のために「電力統制」が行われ、自由企業の電力会社が行政に恣意的(しいてき)に再編された。
 
この結果は惨めな失敗に終わった。電気は特殊な商品で、たえず変動する最終需要に合わせて、「発電」、「送電」の部門をコントロールする必要がある。さらに、発電、送電設備の建設・増設にはリードタイム(注:建設にかかる時間を見込むこと)が必要なので、小売り段階での需要見通しが迅速に発送変電部門に反映されなければならない。いわば心臓と手足のような関係で、これを分断すれば身体はうまく機能しない。
(83〜84ページ)
 
今回の改正電気事業法成立が、2000年前後の動きとどこまで関連しているかは知りません。
とはいえ、そんなことは二次的な話。
 
わが国は、
1) 電力危機を引き起こす恐れがあると分かっており、
2) 電気料金を引き下げる保証もなく、
3) かつて一度やって見事に失敗した政策を
堂々とやることにしたのです!
 
ふつうに考えれば、エネルギー供給責任の放棄としか思えないのですが、それが「電気料金の引き下げやサービスの多様化につなげる電力システム改革の総仕上げと位置づけられている」らしい。
だから、今の日本はパラドックスに陥っていると言うのですよ。
ではでは♪
〜〜〜〜〜〜〜〜以上、全文引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜