記事紹介:日本国民の労働条件はどうなる?


記事紹介:日本国民の労働条件はどうなる?
2015年4月10日(金) 雨
 
ここ数日、とても寒い日が続いており、国内各地で記録更新の遅い雪がニュースになっている。
昨日は、遂に、仕舞おうとしていた別の部屋用のストーブを、自分の部屋に持ち込んでしまった。
まあ、来週からは、一気に気温が上がるらしいので、もう少しの我慢である。
 
本日は、4月10日。天皇・皇后両陛下の結婚記念日である。
と言うか、私の姉の○○歳の誕生日である。
今週の月曜日、姉の長女に4人目の子供が生まれ、孫の数が5人となった。つまり、母の曾孫が5人になった。お目出度いことである。
 
さて、本日は、先日に続き、毎日読んでいる無料メルマガ「三橋貴明の「新」日本経済新聞」の記事を紹介する。
経済学者の青木泰樹さんが担当する記事である。
 
メールは本日届いたのだが、日付が4月11日となっているので、ホームページへの掲載は明日なのかもしれない。
記事の内容は、日本国民の「労働条件に関する新しい法律」のお話である。
これらの法律が成立してしまうと、(多分、圧倒的多数の与党により成立してしまうと思うが)、日本国民の労働条件が益々悪化、格差が益々拡大することになると思われる。
安倍政権が、本当に国民の方を向いて政策決定しているのかどうか、疑いたくなる。
 
新しい法律のポイントは以下。
 
■ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)
●1日8時間・週40時間という労働時間規制の適用を除外する制度
  →即ち、会社が残業代を払わなくて良くなる制度
    労働時間じゃなく、出した成果で賃金を払う。幾ら時間を掛けるかは、本人次第という考え方。
    クリエイティブな業務には適正だが、「何がクリエイティブな業務か」を決めるのは、多分会社側
  →結局、「作業時間が、仕事量に比例する業務」にも適用される危険性大。
 
●私が以前勤めた会社でも、同様の人事制度(成果主義)があったが、適用の選択権は、本人側だった(本人の申告+上司の承認)
  (注)勿論、管理職は無条件に成果主義適用。残業代なし。
 
■解雇の金銭解決の制度化
金を払えばいつでも正社員をクビに出来る様になる制度。
 
■労働者派遣法の改正(派遣期間規制の緩和)
●現状の「最長3年」から、実質期間無制限へ
 (3年以上勤めたら、正社員にすべし! と言うルールが消滅する)
 
●現状の正規員と非正規社員での平均年収比は、(正規:非正規)=(467万円:168万円)≒(3:1)
 非正規社員だと、退職金、ボーナス、社会保険料会社負担分、福利厚生費は不要。
 
○企業のメリット:損益だけを考えれば、会社にとっては、非正規社員に切り替えた方が絶対に得
 ・人件費が格段に落とせる。
 ・いつでも従業員数を増減できるので、損益状況に応じてビジネス規模を柔軟に増減出来る。
   (固定費だった人件費を変動費に変えられる)
 
○企業のデメリット:中長期の成果が出しにくい
 ・新技術などの研究開発
 ・次世代社員への技術移転、ノウハウ移転がしにくい
 ・チームワーク低下による総合力低下
 
○雇用者のデメリット:名目賃金(額面の賃金)の低下
 
○マクロ経済視点でのデメリット:GDP低下
 ・賃金低下 → 消費の落ち込み、需要の落ち込み → 更なるデフレ(生産低下、低価格化) → GDP低下 → 税収減 → 政府財政悪化
 
以下、メルマガ記事『三橋貴明の「新」日本経済新聞 2015/04/11』の全文引用である。
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    『三橋貴明の「新」日本経済新聞』    2015/04/11
 
※配信解除は、最下部でできます。
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From 青木泰樹@経済学者
 
日本の勤労者にとって困苦の時期が到来しそうです。
いよいよ今国会において労働基準法の改正案および労働者派遣法の改正案の審議が始まります。
さらに内閣府の規制改革会議では「解雇の金銭解決制度」の導入を求める意見書が提出されました。
前門の虎二匹に、後門の狼一匹。正に勤労者の生活基盤を貫く三本の槍ぶすまです。
 
労働基準法の改正案に関しては、以前、「国家の根幹」というテーマで労働時間規制の緩和について
問題点を指摘致しました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/category/aoki/page/9/
 
厚労省の提唱する「新しい労働時間制度」、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプション(WE)は、
1日8時間・週40時間の労働時間規制の適用を除外する制度です。
労働時間ではなく仕事の成果で給料を決める制度という触れ込みで、当初は「成果賃金制度」と
言っていましたが、今回は「脱時間給制度」もしくは「高度プロフェッショナル制度」と名称を変更
したようです。
そういえば2007年の第一次安倍(改造)内閣時代、当時の舛添要一厚労大臣もWEを
「家庭だんらん法」に改名せよと言っていたことを思い出しました。
 
名前を変えて国民の目を欺こうとしているようですが、中身は変わりません。
ホワイトカラーに対する「残業代ゼロ法案」です。
当面、対象者は年収1075万円以上の高度専門職となっております。
しかし、これも最初は対象者を絞り、導入してから徐々に対象範囲を広げてゆく「蟻の一穴」作戦
でしょう。姑息極まりない。
 
本来、労働基準法は労働者を保護するための法律です。無論、厚労省も国民の健康と生活を保護する
ことが仕事でしょう。
現行において労働時間規制が守られていないのは労基法36条の規定(サブロク協定)があるためですが、
唯一の歯止めが残業に対する割増賃金の存在なのです。
それを無くそうとしているわけですから、開いた口が塞がりません。
先ずもって為すべき労基法の改正は、過労死ラインと言われる月80時間以上の残業を法律で禁止する
ことです。それが全ての原点でしょう。
タダで長時間残業をさせられた挙句、「過労死すれば自己責任」では勤労者はたまったものではありません。
 
脱時間給制度を支持する経済学者は二言目には時間換算で成果を測れない仕事が増えていると主張しますが、
具体的に如何なる仕事がそうなのかを指摘することはありません。できないのです。
研究職や為替ディーラーのような特殊な仕事を除けば、一般にホワイトカラーの業務の成果を個人単位で
客観的に評価することはできません。
なぜならホワイトカラーの業務はチームプレーだからです。営業も総務も経理も企画も一体となって
はじめて仕事が出来るのです。
部課単位、事業所単位、会社単位で成果が測られるものなのです。全体の成果が企業業績なのです。
 
この改正案が通ったところで、一般企業に社員の評価システムを変更する強制力はありませんから、
今まで通りです。ただし残業代がゼロで済むメリットが企業側に生じます。
将来的には日本経団連が要望するように、全労働者の10%以上、年収600万円以上のホワイトカラー
が対象とされるのでしょう。
それも省令改正によって簡単にできてしまうのです。
特定の組織や集団の利益のために制度を変更させる行為をレント・シーキングと言いますが、
今回の労基法改正案は企業一般、特に大企業のためのそれと断ぜざるを得ません。
 
さらにその上を行く、分かり易いレント・シーキングが労働者派遣法の改正案です。
その主内容は、派遣期間規制の緩和です。
これまで派遣先の事業所における派遣労働者の受け入れ期間は最長3年間で、それ以降は直接雇用する
必要があったのですが、それが事実上無制限になりました。
また同一人の派遣労働者の受け入れは3年を上限とすることになりました。
 
派遣先の企業にとっては特定の業務に関し正社員を雇うことなく、今後ずっと派遣労働者に
任せられるというメリットが生じました。
つまり派遣業務の固定化が可能となったのです。
今後、様々な業務で派遣社員の受け入れが始まるでしょう。派遣社員に対する需要の増加です。
逆から見れば、それは正規社員の採用の減少を意味するわけです。
他方、派遣社員の方は正規社員の道が閉ざされることになりますから、不安定な雇用状態が継続する
ことになります。
 
「同一労働・同一賃金」が確立されている欧州諸国と異なり、日本では正規社員と非正規社員では歴然
とした格差があります。
国税庁の民間給与実態調査によれば、2012年時点で、正規社員の平均年収は467万円、
これに対し非正規は168万円です。
非正規の給与は正規の36%にすぎないのです。
 
派遣社員に対してはボーナスを支給する必要はありませんし、社会保険料事業主負担もありません。
正社員の給与に消費税は課税されませんが、派遣社員へ支払う外注費は消費税の仕入れ税額控除の対象
になります。
さらに解雇も容易ですし、退職金も支払わないで済みます。
こうした非正規雇用のメリットが存在する限り、企業側に正規から非正規へ代替する誘因が生じて
しまうのです。
 
労働者派遣の基本構造は、同一業務における正規と非正規の給与差額が、収益として派遣先企業と
派遣元企業(派遣会社)に分配されることです。
すなわち、勤労者から企業への所得移転が生じるのです。それは勤労者の所得の収奪と言えます。
今回の改正案は、同一労働・同一賃金が実現していない状況において、派遣社員を増加させる方策ですから、
マクロ的に見て勤労者の窮乏化は今後ますます進行するでしょう。
もちろん、勤労者が窮乏化、貧困化すればするほど、派遣先および派遣会社は儲かることになります。
正にトレード・オフ。
 
派遣会社が一番儲かる状況は、現状において社員全員が派遣社員になることです。
雇用者全員が派遣会社を介して就業している状況下では、全員が派遣会社にマージンを払い続けなければ
なりません。その時、派遣業界の利潤最大化が達成されるのです。
以前、産業競争力会議の民間議員で派遣大手パソナの会長である竹中平蔵氏
「正社員をなくせばいい」と発言したのは、このためです。
とても分かり易いレント・シーカーですね。
さらに竹中社中とおぼしき経済学者の八代尚宏氏、大田弘子氏等もマスコミを通じての援護射撃を怠りません。
 
代表的な彼等の論理は、「労使対立」を正規と非正規間の「労労対立」にすり替えることです。
「正規と非正規の格差問題の根源は、正社員が過度に保護されているからである。非正規社員の待遇改善
のためにも同一労働・同一賃金の制度をつくらなければならない。その第一歩が正規・非正規の垣根を
なくすことである」と。
この手の詭弁には注意しなければなりません。
 
彼等の唱える同一労働・同一賃金とは、正社員の給与を限りなく派遣社員へ近づけることを意味しています。
いわば正社員の足を引っ張って収斂させようとしているのです。
言うまでもなく、勤労者のためには、非正規の待遇を正規へ近づけることによって同一労働・同一賃金が
達成されることが肝要なのです。
派遣社員の手を引っ張り上げることで収斂させなくてはなりません。
同一の概念であっても目的地は手段の選択によって真逆となるのです。ひとつは企業にとってのパラダイス、
他は派遣社員にとってのそれです。
 
レント・シーカー達の考える解雇規制の緩和に関しても、正社員の既得権益を問題視して解決策を考える
という点で、これまでの議論と軌を一にするものです。
この場合には、解雇の金銭解決の制度化が「同一解雇ルール」になるわけです。
現在は解雇の正当性に関して裁判による判断が必要となっておりますので、金銭解決が可能となれば、
裁判を避けたい大企業にとって有利になるというシナリオです。
 
以上の勤労者いじめ三点セットが実現したら日本の将来はどうなるのでしょう。
正社員は無償の長時間残業によって疲弊し、会社にとって不要と判断されるや多少の金銭で解雇され、
低賃金の派遣労働者が急増し、対するに竹中氏は大笑いという未来像が仄見えてくるのです。
 
安倍政権は誰のために政策を行なっているのでしょうか。
第一次安倍内閣時代、安倍総理は竹中氏と共に「労働ビッグバン」を成し遂げようとしました。
現在は「労働規制という岩盤規制を安倍ドリルで突き崩す」に表現は変わりましたが、中身は同じです。
勤労者にとっては一層厳しくなっているかもしれません。
安倍総理のドリルの先にあるのは「正社員の既得権益」のようです。その粉砕は派遣会社の利益に直結します。
現在の就業者の約三分の二の人達の生活が標的となっているのです。
 
正社員の既得権益というのも実に不適切なレッテル張りです。
1985年に労働者派遣法が制定されて以降、幾度かの改正によって徐々に派遣労働の対象範囲が
拡大してきました。
法律の制定および改正にあたって、同一労働・同一賃金の原則を取り入れなかったことが低待遇の
派遣労働者を生んだ原因です。
完全に政策策定ミスによって生じた正規・非正規間格差を、今更、何の咎もない正社員へ責任転嫁するとは
主客転倒も甚だしい。
決して正社員が悪いわけではありません。
そのうち外国人労働者の受け入れを始めれば、その時は「日本人の既得権益」を問題視するのでしょう。
嘆かわしいことです。
 
安倍総理は日本を「世界で一番ビジネスのしやすい国」にしようと言明しています。
今後、法人税減税を繰り返し、労働規制の緩和を実施すれば、確かに企業にとって低コストの生産が可能となるでしょう。
しかし、国民経済を支えているのは自国の勤労者であることを忘れてもらっては困ります。
安倍総理には、勤労者が疲弊し窮乏化すれば、その延長上にある国民経済も活力を失うという当たり前
の事実を再認識して頂きたいと願うばかりです。
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 以上、記事の引用です。
 
先日の佐藤健志さん(作家)の記事で紹介した「経済とビジネスの違い」を私なりに以下の表にまとめてみた。
 
安部首相は、本当に経済とビジネスの違いを分かっているのだろうか。いくらビジネスのしやすい国にしても、肝心の国民生活が貧困化するのでは全く意味がない!