愛犬クロ(回想)

愛犬クロ(回想)

 我が家の愛犬クロが旅立ってからもう8年半が経つ。
クロが生まれたのは、私達夫婦が結婚する前である。1986年の秋か冬の頃だったと思うが、当時、カミサンの実家で飼っていた犬・コロの子供として誕生した雄犬がクロである。婚約期間中だった私は、カミサンの実家に行ってはクロを抱っこして可愛がったものである。そして翌年の春に結婚し、夏に今のウチ(中古住宅)を購入することになった際に、クロを貰って来て我が家で飼うことになったのである。以来、クロは我が家の一員となり、後に生まれて来る我が家の子供達と共に成長しながら14年間を我が家で過ごすことになったのである。

 我が家に来た最初の頃は、それまでカミサンの実家で義母が朝の暗いうちから散歩に連れて行っていた習慣が付いていたために、明け方の4時頃になると散歩に連れて行けと言ってギャンギャン吠えたものである。我々夫婦が睡眠不足になったのは勿論であるが、ご近所からも苦情が出る事態となり、やむなく、毎朝4時に起きて散歩に連れて行き帰ってから寝直すという生活を、躾け直すまでの1年くらいは続けることになったものである。

 平成13年(2001年)の年が明けた頃だったか、ある朝、クロの動作がおかしくなり、右半身が思う様に動かせない状態になってしまった。ドッグイヤーは人間の7倍の速さと言うから、14年だと人間ならもう100歳に近い訳であり、身体のどこかに不具合が出て来ても仕方がないことなのだろう。それでも、散歩に連れていけば右半身をヨタヨタさせながらも元気に歩いていたものだが、夏に入った頃だったか餌を全く口にしなくなり、体力が見る見る落ちていった。そこで、肉を柔らかく錬った缶詰の餌を試しに口の中に押し込んで見ると、これは飲み込むことが分かり、しばらくはこれを続けて少し元気が回復した。しかしながら、それも長くは続かず、飲み込むことも出来なくなったので、今度は、ユンケル黄帝液を買って来て口に流し込んで栄養補給することで何とか体力を維持させた。
 そして8月。我が家は盆と正月は九州(福岡)に帰省することにしているので、いつもは犬好きのお向かいさんに餌やりをお願いするのだが、今年の夏は、専門のペットシッターにお願いして留守中の1週間、クロの世話を頼むことにした。下見にきたシッターの方も何とか大丈夫でしょうと言ってくれていたのでホッとしていたのだが、帰省する8月3日の朝、ユンケルを飲ませた後、部屋で帰省の準備をしていたら子供達が来て、「クロの様子が変、車の下に潜り込んだあと動いていない様だ」と言う。急いで外に出て見ると、もう一目で分かった。触ってみたが、もう死後硬直が始まっていた。帰省で留守をするのでしばらく会えなくなると言うことをクロは分かっていたのだろう。家族に心配を掛けまいとして出発の前にあの世に旅立ったのではないかと思う。クロの遺体をシーツでくるみ、夫婦で近くの山の中の静かな場所に埋葬して、お酒を掛けて供養してあげた。これでクロも土に還ることができるだろうと願いつつ。

 あれから8年半、クロがいなくなってからと言うもの、近所のノラ猫が我が家の庭に我が物顔で出入りする様になり、今では我が家を栖(すみか)と思っている猫もいる。カミサンは猫がいいと言っているが、私はやはり犬が良い。


「生まれて数ヶ月のクロ(1987年冬)」


「コロとクロの親子(1987年冬)」


「我が家の一員となったクロ(1987年夏〜秋)」


「年老いたクロ(2001年冬)」